水循環基本法が成立

 平成26年3月27日、第186衆議院通常国会において超党派の議員立法で「水循環基本法」が成立、本年8月1日施行される。

「水循環基本法」は第1章~第4章から成り、条文は第1条~第31条まで記されている。
 基本法の目的として、水は人類の共有財産であることを再認識し、健全な水循環の維持、回復をさせるために必要とし、基本的な計画の策定や水循環の基本となる施策などが定められている。
 これらは当会の進める方向と国政での施策が大筋で合致している。

 

 第1章総則では、この基本法の目的、基本理念などが定められており、「水循環」や「健全な水循環」についても定義されている。
「水循環」の定義は、水が蒸発、降下、流下、浸透により海域などに至る過程で地表水または地下水として河川の流域を中心に循環すること。「健全な水循環」の定義は、人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環と、記されている。

 第3条では、健全な水循環の維持、回復のため積極的に推進されなければならないとし、国は水循環に関する施策を総合的に策定。実施する責務、地方公共団体は国、他の公共団体と連帯を図り、地域特性に応じた施策を策定し、実施する責務を有する。  
 事業者は国、地方公共団体の実施する水循環に関する施策に協力する責務を有する。国民に対しては、国、公共団体が実施する水循環の施策に協力するよう努めなければならないとし、関係者相互の連携及び協力を求めている。 
また、政府は施策の基本方針や必要な法制上または財政上の措置、その他の措置を講ずるよう定めている。

 

 第2章では、政府は水循環に関する基本計画を定めなければならないとし、基本計画の公表や施策の効果に関する評価を踏まえ、5年程度の間隔で計画の見直しを行うことや、計画の実施に要する経費に関し必要な資金を財政の許す範囲で予算計上するなど、実施に必要な措置を講ずるよう記されている。

 

 第3章基本的施策では、国及び地方公共団体は森林、河川、農地、都市施設など水の貯留、涵養機能の向上を図るための整備や必要な施策を講ずるとし、流域連携の促進、教育の促進、民間団体等の自発的な活動を促進するための措置、策定に必要な調査の実施、健全な水循環の維持又は回復に関する科学技術の振興を図るための体制整備、研究開発の推進、その成果の普及、研究者の養成他、国が必要な措置を講ずるよう定めている。

 

 第4章では、内閣に水循環対策本部を置くことや、組織形態等について定めている。

 

<水循環基本法に対する当会の所感>
  この「水循環基本法」が施行されると国、地方公共団体、事業者、国民は森林、河川、農地、都市施設などにおいて貯留、涵養機能の向上を図るための調査や、基本計画など、効果的な施策を講じ実施することになります。
 健全な水循環の回復により、地球の全ての生物は本来あるべき自然環境の中で、水の恩恵を受けることができると思います。

 健全な水循環の維持や回復には土の役割が必要不可欠です。しかし、土の持つ優れた浸透能力や貯留能力(土の種類により異なる)、酸性雨の緩衝、浄化機能、地表面の温度をコントロールするなど、土の特性については残念なことですが周知されているとは言い難い現状があります。


 環境地水技術研究会は、長年、雨水の土壌浸透プロセスや、地下水涵養効果など学際と共同研究、蓄積されたデータを解析、精度の高い透水速度の測定試験方法や、効果的な施工手法を開発、健全な水循環の回復に向け実践をしております。
 また、土壌浸透貯留に関する技術の向上と人材の養成を目的とした講演会、技術研修会の開催など積極的に活動しております。
 今回、施行される「水循環基本法」に定められている施策は、当会の進める方向と、大筋で合致していると言えます。


環境地水技術研究会理事長

宮澤 博

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